世界からサランラップが剥がせない  川合大祐

世界ってなんだっけ? となった。この世か。地球か。それとも、ある分野の全体を意味するのか。この句の世界の意味は読者に託されている。ただ、お皿を世界を大げさに言って見せただけと読んでもいいと思う。だが、サランラップが剥がせないということは揺るぎそうにない。切り方は楽になってきたものの、張り付いたサランラップは剥がしづらい。それは対象がなんであれ同じではないかということ。ということは世界は各々の価値観で当てはまるものをなんでも入れてくださいというメッセージでないかとも思った。しかし、違うのだ。もう一度読んだ。剥がしづらいのではなく、剥がせないのだ。これは絶望ではないだろうか。サランラップはご存じの通り透明だ。そして対象の状態が見える。世界をいっときだけ守ろうとして使ったサランラップが剥がせない。ややもすると世界が腐ってしまう。その過程をも見守らねばならない。その無力感に苛まれる。気が付けば、わたしの世界にも剥がせなくなったサランラップがいくつかある。 うっかり記